会長メッセージ

日本教師学学会創設から25年が過ぎました。学会創設時に刊行しました『成長する教師―教師学への誘い―』においては,学校の先生方が自らの授業において「教える」という経験を積み重ねることで人間として成長していくことが一人ひとりの教師にとっていかに重要であるのかという考え方を大切にしました。

それから25年,学校の先生方だけなく,看護師のみなさんをはじめ,対人支援職と言われる専門家や実践者の方々の会員が増え,本学会が本来目指してきた「人を教える」ということが「教える人」自身の成長にどのような意味を持つのかということが探求されてきていると感じています。それは,人は人とかかわる中で,そのかかわりとは教え教えられる関係ですが,どのように人として成長していくのかという本質的な問いを探求してきたということだと思います。そして本学会は,そのような人と人とのかかわりの場であり続けたいと思います。

本学会が会員の皆さんの成長の場となるためには,一人ひとりが日々行っている実践をお互いに理解することが必要です。そのためには,それぞれの実践を言葉や映像で表現し,共有することが求められます。そのために実践レポートという枠を学会誌『教師学研究』に新たに設けました。これは,学会活動を通じて,一人ひとりの意味ある実践やその経験を表現し,互いに理解することにつながることだと思います。すぐれた実践を行うということにとどまらず,当学会で,それを自らの言葉で表現し共有し実践を高めるだけでなく,実践者自身が成長していくことを目指してということです。このような会員の皆さんの取り組みを支える学会活動になるようにという強い思いを持って,一人ひとりの会員の方々が教えあい,学び合う場として本学会が機能するように努めていきたいと思います。

日本教師学学会会長 浅田匡(早稲田大学)